2nd CAAP(2日目)

学会2日目。昨夜は少し寝てから最後の準備をと思っていたが、結局ぐっすり寝てしまい、O 先生の電話で目覚めた。急いで朝食をとり、それから発表会場へ移動して、東京の T 先生の発表を聞く。ホイットマンについての発表。隣に座った学生が、話を聞きながら、スクリーンに映し出された仏教用語などを、小声で中国語で読んでいた。T 先生は中国人の先生と二人でこのセッションのチェアも務められたのだが、驚くことに、発表者たちが姿を現さず、セッションはチェアお二人の話のみとなった。その分、チェアの先生の持ち時間は長くなったらしい。聞き手にとってはよいレクチャーになったようにも思う。中国人のチェアの先生は、スナイダーと般若心経について話をされた。中国でもスナイダー研究は進んでいるようなので、日本の研究者との行き来があってもよいように感じた。

セッションは途中で失礼して、ホテルに戻ろうとしたが、建物の出口を間違えて、方角が分からなくなった。建て替え中の図書館の角を曲がれば、あとは1本道をホテルまで戻ることができるのだが、その図書館が見あたらない。そこで、近くを歩いていたちょっと年輩の人に(大学教員かと思ったが違った)、昨日学生に教えてもらった「図書館はどこですか」の中国語(「トゥーシューグアン ザイ ナーリー」)を使って聞いてみたところ、はじめは通じなかったが、何度か繰り返すうちに通じたらしく(発音を矯正してくれた)、早口の中国語で説明してくれる。こちらはもちろん理解できないので、英語で事情を説明するが、通じない。結局、その人が連れて行ってあげようということになったらしく、いっしょに歩く。しばらくして古い図書館の前に出たが、こちらが図書館で調べ物をしたり本を読んだりするのではないということをなかなか理解してもらえない。新しい図書館はあっちだと身ぶり手ぶりで説明してくれる。英語でホテルに戻るのだということを何度か説明すると、しばらくして通じたらしく、しかし、自分でホテルまで行けるということは通じないので、結局また付いてこいということになったらしい。ホテルまで(知った道だが)案内してもらうことになった。この方の英語のレベルはこちらの中国語のレベルと同じぐらいであるらしく、まるで意思疎通はできなかったが、たいへん親切な方であった。大学内ということもあろうが、出会う人はみな親切な人ばかりでありがたかった。

ランチを経て(ネイチャー系の文学が専門だという台湾の先生と話した)、午後はまた初日午前の会場に移動。ここでまたいくつかの話を聞く。Aldon Nielssen はアフリカ系のモダニズム詩研究の第一人者といっていいと思うが、ブラックアートの時代のアフリカ系の雑誌についての話はやはり面白く、勉強になった。彼はロックにも詳しいらしく、そちらの話も面白そうだった。Yunte Huang は以前 MLA でも会っているが、Transpacific Displacement などの著書で日本でも比較的よく知られていると思う。中国の大学を出てからアメリカに行き、博士号を取って、アメリカの大学で教えているが、今回はホームカミング的意味合いもあったらしい。実際、中国人の若手研究者や大学院生たちは、先輩学者を尊敬の眼差しで眺めていたように感じた。前日飛行機の関係で到着できなかった韓国の先生、主催者の一人 Luo 先生も話をされた。そのうちに自分の順番がまわってきたので、ハッキョン・チャについての話をする。予定通り、iPad で PDF を読み込んで話をしたが、iPad Mini は画面が小さく、老眼の身にはちょっと文字が小さく難儀した。それもあって、聴衆を見て話すということがあまりできなかったように思う。授業で学生に「アイ・コンタクト」と言っている割には自分で実践できず、情けなし。ともあれ、発表も無事終了。内容からして、韓国の先生方が気を悪くされないか少し心配したが、そんなこともなくてよかった。

夕食では、こちらの大学を出て、マサチューセッツ州の大学院で学んでいるというたいへん優秀そうな学生の隣となった。ブルーズについて研究しているということだったが、英語はきわめて堪能で、またよく話す快活な学生さんだった。日本のアニメも好きであるらしい。彼女もきっとそのうちに大学で職を得ることだろう。散会の後、隣のレストランで O 先生と2次会。それから部屋に戻ってパッキングをしていると、Luo 先生から電話。夕食後、近くの茶館に行かれたそうで、その際にこちらの部屋にも電話したが留守だったということだった。挨拶しにホテルに寄ると言われるので、1階まで降りていくと、しばらくして浙江大の若い先生と一緒にお出でになった。いろいろ話し、記念撮影して別れる。ただでさえ忙しいはずなのに、わざわざホテルまできて挨拶してくれるというホスピタリティに感服。こうした形で、今後もおつきあいできればと思う。ハプニングあり、新しい出会いありの有意義な学会だった。