上海

仕切り直しで再び空港に向かうべく家を出るが、夜半から年一度か二度の大雪に見舞われ、名古屋でも積雪。キャリオンバッグを引きずることもできないので、片手で持って、地下鉄まで歩く。地下鉄のダイヤは乱れていたが、大したことはなく、無事に金山まで来た。しかし、名鉄の方は大幅に乱れており、空港行きの特急が来ない。駅員に聞いても、どうなるかわからない。ともかく来た列車に乗れという。しばらく待っていたら、準急が来た。先に特急が来るはずだが、来ない。準急に乗るべきかどうかわからなかったが、他に選択肢もなさそうなので、乗車。列車は途中で信号停止をしたり、スピードを落として走ったりして心細いことこのうえない。途中から雪も激しく降り出した。しかし不思議なもので、常滑を過ぎるあたりから天気がよくなり、何事もなかったかのように、列車も走り出した。空港に着いてみれば、普段と変わらぬ様子。昨日は風で波が立っていた海も、今日は穏やかに見える。搭乗手続きをして、保険に入り、土産を買い(店の人によると、中国土産はカステラがよいというので、文明堂)、今日も握り飯+味噌汁を食べてから、手荷物検査。ゲートへ移動して乗船、離陸。飛行はスムーズで、ほとんど揺れることもない。窓から下界を見下ろすと、厚い雲の絨毯。ときおり、雲が切れるので、その間に瀬戸内海?などが見える。3時間近く飛んで空港に近づく。以前は畑であったように記憶する周辺の土地には、マンションらしき建物群が見える。すさまじい勢いで都市が膨張しているのだろう。

入国審査。あらかじめ送ってもらっていた学会招待状を見せると、係官はふむふむと頷いて、通してくれた。荷物をピックアップして、タクシーに乗る。例によって運転手は英語を解さぬが、留学生に書いてもらった「ウィーンホテルまで頼みます」の紙を見せると、そのホテルの場所はわからないようだったが、ケータイで場所を確かめ、高速道路を走り出す。なかなかスリリングな運転だったが、腕に自信がある様子。ホテル近くで少し道に迷ったが、無事到着。謝謝。ホテルのリセプション・カウンターには若い男性従業員が二人いたが、ともに英語を解さず、また例によって筆談となる。しかし、どうも予約リストに自分の名前がないらしい。要領を得ないので、キャリオンバッグのみ預かってもらって、まもなく始まろうとしていたバンケットの会場へ行ってみることにする。会場はすぐ近くの店だというので、歩いて行くが、それがどこにあるのかまったくわからない。通りには、学会(The 3rd Convention of the Chinese/American Association for Poetry and Poetics)の会場として使われている上海師範大学の学生らしき若い人が数多くいる。英語が話せそうな人をつかまえて聞いてみると、親切にも、連れて行ってくれるという。ただ、その人も実際には場所がわかっておらず、スマホで知り合いに聞いたりするのだが、結局わからず。別の通行人に聞いてくれたら、その人は場所を知っており、通りの反対側だという。(ちなみに、この人は英語がよくできた。)そうかと思って反対側を歩いてみたら、最初はわからなかったが、通りから少し内側に入ったところに、会場となるホテルがあった。ホテル内でさらに何度か場所を聞いて、ようやく学会参加者の集まるバンケット・ホールに到着。知人の先生方に挨拶して、食事に加わる。バンケットから参加ということになり、わざわざ名古屋から飯を食いに来たというような格好になったが、致し方ない。食後、アルバイトの院生(快活な学生さんだった)について行ってもらって、宿泊のホテルに戻り、チェックイン。どうやらフライトのキャンセルのためにホテルもキャンセルしてもらう際に、1泊のみでなく3泊すべてキャンセルだと勘違いされたらしい。ともかく、無事にチェックインできてよかった。

それから、ロビーで待っていてもらった院生とともに、詩の朗読会の会場へ。途中で話を聞くと、その院生は M1 で、翻訳学を学んでいるという。翻訳学は中国で盛んであるらしい。会場に着くと、朗読会はすでに始まっていた(写真)。中国語の詩を読む人もいれば、著名な詩人の英詩を朗読し、その中国語訳を読む人、自作詩を中国語で読んだうえで、英訳を読む人もいる。アメリカ人、韓国人は英語で詩を朗読。案外笑えるものもあったが、それもまた楽しの世界であった。中国語の部分はわからないが、朗読する人、それを聞く人がともにたいへん楽しそうであった。途中でワインも回ってきた。普段、かしこまってペーパーを読んでいるように見える大学の先生たちの別の面を拝見したような気もするし、教員と学生のよい関係も感じられて、とてもよかった。散会後、同じホテルに宿泊している中国人の先生と帰路に就く。英語は読めるが、あまり話せないと言う方だったが、会話は成立。部屋に戻って、持参したドリップバッグでコーヒーをいれて飲む。