京都行

NASSS で来日した先生が、せっかくだからセミナー終了後に日本を見たいという。古い友人なので同行したいのだが、会議その他があり、結局、文学・文化部門のもう1人の先生とともに、京都訪問のみ付き合うことになった。朝、ホテルのロビーで待ち合わせ、そこからタクシーで名駅へ。新幹線に乗って京都まで。道中、ご家族のことなどあれこれ教えていただく。京都到着後、彼女のスーツケースを階段下のコインロッカーに入れ、それからバスに乗って金閣寺まで。金閣寺は去年の秋にも来たが、そのときは雨だった。今年は7月末で、天気は曇り。曇ってはいるが、暑い。秋の雨の日に比べると、金閣はずっと明るく、けばけばしい感じすらする。観光客は思ったよりも少なく、ごった返す中を歩かずにすんだのはよかったが、観光業に携わる京都の皆さんは不安だろう。実際、4月、5月はほんとうに空いていて、観光にはとってもよい季節になった、という皮肉混じりの話も聞いた。7月に入って少しずつ観光客が戻ってきたということだが、それでもまだ観光バスは来ないという。庭を歩いている内に、この寺には坊さんがいないがどうしたのか、と聞かれたので、朝早くに修行で境内の掃除をしたりしているはずだ、と思いつきを述べる。

金閣寺を出る頃には雲も晴れ、よい天気になる。昼時の炎天下、バス通りを西に向かって歩く。途中で、立命館大学の前を通ると、まだ夏休みに入っていないのか、バス停に学生の群れ。20分ほど歩いて、竜安寺。駐車場から手招きする人に誘導されて細い通りに入ると、途中で呼び止められ、御茶屋さんからお茶を振る舞われる。しばし休憩の後、石庭へ。ここも去年来たが、今年はがらんとしていて、気持ちがいい。順番を待つことなく、庭に面して座ることができる。石と砂の庭と年経た塀をしばしぼけっと眺めた後、再び靴を履き、境内を歩いて、西源院へ。ここの湯豆腐で遅めの昼食。湯豆腐1,500円は高いが、冷房の効いた畳の部屋で、庭を眺めながら座っていられるのは極楽。食後、シエスタの時間だと冗談を言いあうが、もちろん、寝るわけにはいかず、店を出る。

歩くのもバスを乗り換えるのも疲れるので、今度はタクシーに乗って、京都市内を横断、一路清水寺まで。京都を回る際は、東なら東、西なら西に腰を据えて、1日寺を三つぐらい回るのがよい、とセミナーの際に京都で学ぶ院生から聞いていたが、日本にたびたび来るわけではない人を案内する場合は、そういうわけにもいかず。タクシーを降りて、清水の坂を歩く。金閣寺竜安寺にくらべると、こちらは賑やかで、外国人観光客も多い。青いTシャツを来たアメリカの高校生の集団がいるかと思えば、黄色のTシャツを着た小学生・中学生のグループも保護者に見守られながら走り回っている。青の軍団と黄色の軍団が移動した後でないと、記念撮影もおぼつかない。昨年着たときは、雨で時間も遅く、清水の舞台から視界も限定的だったが、今日は明るく、緑濃い境内を歩いている観光客も見えるし、遠く京都市内を見渡すこともできる。ただし、客人は舞台からの眺望よりも、仏像の方に興味があるらしく、舞台とは反対側に位置する暗い部屋の中に潜り込み、出てきたかと思うと、ヒンズーの神像との異同を語ったりする。

それから、青の軍団に前後を挟まれつつ、細い道をくだっていくと、急に雷鳴がとどろきはじめ、ぽつぽつと大きな雨粒も落ちてくる。土産物屋を冷やかしながら、坂道を下っていくと、雨はいよいよ本降りになってきて、急いでタクシーをつかまえ、座席に滑り込む。花見小路でタクシーを降りると雨は止んでいる。が、これ幸いと界隈を歩くうちにまた降り出したので、これはいかんと、雨宿りを兼ねて喫茶店に入ったつもりが、メニューを見るとコーヒーを出さぬ甘味喫茶であることが判明。雨の中、店を変えるのも大変なので、客人には抹茶を飲んでもらい、こちらは大盛り抹茶かき氷に挑戦。かき氷、最後に食べたのはいつか、思い出せず。ボリューム満点で体重増間違いなし。そうこうするうちに、夕方になったので、再びタクシーに乗って京都駅へ。両替をしてもらい、スーツケースを取り出して、新幹線に乗り込む。我々二人は名古屋下車、客人はそのまま品川まで乗っていく。この後、東京のホテルに泊まって、明日は富士山までのバス観光、翌日ははとバス?で東京観光の予定とか。一人で大丈夫か心配だったが、日本人は親切なので、大丈夫だという。(実際、ホテルから電話があり、駅の出口もわかったし、タクシーも簡単に拾えたということだった。)

かくして、京都行きは終了。名古屋下車の後、我々は名駅の「さ嘉なや」という居酒屋で晩飯兼打ち上げ。ビールと焼酎で、お互いお疲れさまでした、と乾杯。ついでに、来年の学会開催についてのノウハウを伝授してもらう。こちらはこちらでなかなか大変そうである。